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9 おやすみなさい

last update 最終更新日: 2025-10-30 20:43:29

 離れが見えてくるとユリアンに声をかけた。

「ユリアン……降ろして。もう1人で歩けるから」

「はい、分かりました」

ユリアンは背をかがめて私を背中から降ろした。

「もう行って。1人で部屋に戻れるから」

「本当に大丈夫ですか?」

ユリアンが心配そうに私を見つめる。

「え……? 何故そう思うの?」

「それは……フィーネ様が震えているからです」

「え?」

言われてみて今更気がついた。自分の身体が小刻みに震えている。

「あ……さ、さっき倉庫で怨霊に襲われかけたから……で、でも貴方が現れてくれて……た、助かった…わ…。ありがとう……」

自分の身体を抱きしめ、声を震わせながら何とかお礼を述べた。

「いえ……でも怖かったですよね?」

ユリアンが気遣うように尋ね、黙ってコクンと頷く。

「やはりお部屋まで……」

「いいの私に関わった使用人は見つかればクビにされてしまうわ……。だから私に構わないで?」

「ですが……!」

ユリアンは拳を握りしめた。

「身勝手な話かもしれないけれど……私、ユリアンにはここを去って欲しくは無いの。もし私に親切にしている姿を叔父家族に見つかってユリアンがクビにされるのはいやだから……」

「フィーネ様……」

「大丈夫よ。ほら、話している内に震えも止まったし、離れはすぐそこだから1人で帰れるわ。それで……最後に一つ聞かせてくれる?」

「はい、何でしょうか?」

「どうして私があそこに捕らえられていると分かったの?」

「それはヘルマお嬢様の側使いの3人のメイドに尋ねたからです。するとフィーネ様を倉庫に閉じ込めたことを話したので、急いで助けに参りました」

「まぁ、そうだったの。それにしてもよくあの3人が話してくれたわね?」

するとユリアンは少しだけ目を伏せると言った。

「ええ……。実は白状させるのに少々乱暴な手を使ってしまったものですから」

「え!? そんなことをしたの!? それじゃ、叔父家族にユリアンが私に親切にしていることがバレてしまったんじゃないの!?」

しかし私の言葉にユリアンは笑みを浮かべる。

「大丈夫です。ご心配には及びません」

「だけど……」

「私の身を案じてくださってありがとうございます。大丈夫です。決してフィーネ様が心配される事態にはなりませんから」

ユリアンは妙な自信を持っている。

「そう? なら信じるけど……でも、本当にここまでで大丈夫よ?」

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